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路上というのは普段道場やジムで練習してる時とは訳が違う。
危険な要素がこれでもかという位に詰め込まれているのが路上の喧嘩だ。
危険な要素がこれでもかという位に詰め込まれているのが路上の喧嘩だ。
まず思っているよりもザラザラしている。
散らばる小石や砂やガラス片が想像以上に始末が悪い。サンドペーパーの様になるのだ。
露出している顔や手などは、路上と僅かに干渉するだけで擦過傷になってしまう。
そして暗い。夜の路上は本当に暗いのだ。
普通に通過するだけでは分からないが、攻防をしようとなると明るさが余りにも不足している事に気付く。
ポツポツと点在する街灯程度の明るさでは、相手の攻撃はまるで見えない。
今回も自販機と街灯の明かりだけが、人間の輪郭を辛うじて映し出してくれるのみだ。
眼鏡を外してしまってるので余計に何が何だか分からない。
近眼で得した事は今まで一度しかない・・。
こうなってしまうと「かわす系」のディフェンスは全く役に立たない。
相手の攻撃も見えないのに、パリーもダッキングもウィービングもないのだ。
ブロックも相手の攻撃のタイミングがわかりづらいので威力を殺しきれない。
本当に夜の路上は始末が悪いのだ・・・。
踏まれ蹴られて、気がつくとセンターラインの上まで来てしまっていた。
誰か通らないかな・・車が来ないかな・・弱気の虫が顔を覗かせる。
時折、隙を見て顔面にも靴先が襲って来るのだが、それだけはどうにか防いだ。
人間、咄嗟の時に庇うのは顔面なんだと、後からつくづくそう思った。
お互いの荒い息遣いが静かな闇の中に響く。
やっと太ったチンピラ風の男の攻撃は一段落し、何やら勇ましく口上を述べている。
何故俺はこれ程までに痛めつけられねばならないのか・・?
ただ自分の車を抜いて行っただけの俺に、これだけ執拗な攻撃をする必要が何処にあるのか・・?
こういう人間が世間にのさばっていていいのか・・?
あまりに理不尽すぎる・・・。
許せない・・許せない・・絶対に・・許さない!
いつもの「血」に火がついたのは自分でも分かった。
ギュウッと拳を固める。体がカ~ッと熱くなり、全身に力が漲る。
何やらグダグダ言いながら、ボコッと蹴りを入れて来るチンピラ風の男を観察する。
慌てふためいていた先刻とは明らかに違う自分が居る。体は熱いのにやけに頭は冷めている。
視線の先にダボダボしたズボンを履いた男の足がある。
クッソ~ッ!このデブいい気になりやがって!
ザザッ!寝転がった状態から右足を思い切り振り抜く。自然に体が動いた。
こんな技は練習でも一回もやった事はない。「血」に着火した時は頭よりも先に体が動くのだ。
体は独楽の様に回転し、アリキックの様な蹴りが放たれる。
蹴りは男の膝裏に命中し、ガクンと膝が折れる。
虚を衝かれた男はそのままバランスを崩し尻餅をついた。
絶対に許さない!感情のまま飛びかかり、両の拳を顔面めがけて振り下ろす!
飛びかかった際、自然と馬乗りみたいになったのは良いが、これが意外に安定しない。
相手の腹がブヨブヨだったせいか、興奮しすぎていたせいか、上手くパンチが当たらない。
それでも滅茶苦茶に拳を落としていく。ただ顔面を殴る事しか考えられない。
長年かけて練習して来た技など何も出ない。ただただ顔面に拳を突き立てる。
ストレートもフックもない。拳に怒りと憎しみを込めて振り落とすのみ。
男は仰向けから起きようと何度か上半身を起こすも、狂った様に放たれる拳でその度に沈んでいく。
ゴンッ!ゴンッ!アスファルトに後頭部を激しく打ち付けているのは、拳の感覚で分かる。
男は起き上がるのをやめたのか、そのまま仰向けに寝転がる。
「がああああ~っ!」声にならない雄叫びをあげながら殴り続ける!
ガツン!ガツン!ガツン!顔面を捉えた拳に、肘に、肩に、重く固い衝撃が伝わる。
何発殴ったか分からないが、男はだらんと脱力していた。
恐らく起き上がるのをやめたと思った時点で、とっくに失神していたのだろう。
身に着けている金のネックレスとブレスレットが自販機の明かりに照らされて怪しく光る。
パンチパーマの男の鼻と口の辺りはグチャグチャで真っ赤だ。
フウフウと荒い息づかいの中、ハッ!と気付く。車の中にもう一人居たはずだ!
慌てて身を翻し、セルシオに向かって走る。
思い切り運転席のドアに前蹴りを数発ぶち込み、「らあ~っ!」意味不明な雄叫びを上げながらドアを開ける。いかにもという悪趣味な車内から、タバコと香水の臭いが一気に外へ流れ出る。
助手席では、いかにもチンピラの女という容姿の女が泣きながらガタガタと震えている。
過去、このパターンでチンピラ彼氏が善良な?人間達を葬る様を、面白おかしく見て来たのだろう。
そうでなければ途中で止めに入るなり何なりするはずだ。このクソアマが!
獣の様にガッ!と踏み込み、威嚇する。
確かにあの勢い、あのパターンでは、常人では滅多打ちにされて終わってしまうだろう。
皆に「何の為に?」と笑われながらも、愚直に鍛え続けたこの体が役に立ったのだ。
思い切りセルシオのドアを閉め、更にもう一発前蹴りを食らわす。
センターライン近くでは男が未だ微動だにせず、だらしなく四肢を放り出している。
それを見るや興奮は最高潮に達し「うおおおお~っ!」両拳を握り締めながら思い切り叫ぶ。
敵を倒した喜びなのか何なのか自分でも分からない。ただ本能の赴くままに叫ぶ。
すると真っ暗だった近くの民家の電気が次々に点き出した。ヤバイ!
慌てて車に乗りこんでアクセルを踏む。勿論、ナンバー灯が光る為、ライトは点けない。
この辺りは過去のトラブルの経験が活きている。
真っ暗の中、自宅に向かって疾走する。
しかし途中で、つけられてたらマズイ・・と進路変更し、そのままアテもなく走り続ける。
暫くするとハンドルを握る手に違和感を感じ始めた。上手く握れないのだ。
拳を見ると両方ともパンパンに膨れ上がっている。こりゃやっちゃったか・・。
徐々に冷静さを取り戻すと、途端に弱気になってきた。
ナンバー見られなかったかな・・死んでないかな・・様々な不安や憶測が頭をよぎる。
ああ・・待ち伏せとかされたらどうしよう・・車変えようかな・・俺は元々気の小さい男なのである。
しかし・・心配しながらも、それ以上にチンピラ男を撃破出来た事に満足していた。
あれだけの攻撃を食らっても耐えられた事、体重差があってもKO出来た事・・。
今まで笑われながらも続けて来た事が無駄ではなかったという満足感、安心感、充実感・・。
こういう瞬間は人生という長いスパンで考えても、そう多くは訪れないであろう。
どれ位走っただろうか?車は通り慣れた道をなぞる様に家へと向かっていた。
車を自宅の車庫に入れ、玄関のドアをくぐる。既に両親は寝ている様だ。
明朝、顔を合わせたら、階段で転んだと嘘をつこう・・無駄な心配をかけたくなかった。
風呂場に行き、服を脱ぐ。ズキズキとアチコチに痛みが走る。
異様な形に膨れ上がった両拳、擦過傷だらけの腕や足、変色し始めた胸と腹を見つめる。
それぞれの患部をチェックしてみる。素人判断だが、拳以外は骨折までは至ってない様だ。
顔を上げ、鏡を見る。
顔も頭もあれだけの攻撃を受けた割には傷が浅い。
ふうう・・・深く大きく安堵の溜息をつき、もう一度鏡を見る。
鏡の中には、口元に微かな笑みを浮かべた自分が居た。
散らばる小石や砂やガラス片が想像以上に始末が悪い。サンドペーパーの様になるのだ。
露出している顔や手などは、路上と僅かに干渉するだけで擦過傷になってしまう。
そして暗い。夜の路上は本当に暗いのだ。
普通に通過するだけでは分からないが、攻防をしようとなると明るさが余りにも不足している事に気付く。
ポツポツと点在する街灯程度の明るさでは、相手の攻撃はまるで見えない。
今回も自販機と街灯の明かりだけが、人間の輪郭を辛うじて映し出してくれるのみだ。
眼鏡を外してしまってるので余計に何が何だか分からない。
近眼で得した事は今まで一度しかない・・。
こうなってしまうと「かわす系」のディフェンスは全く役に立たない。
相手の攻撃も見えないのに、パリーもダッキングもウィービングもないのだ。
ブロックも相手の攻撃のタイミングがわかりづらいので威力を殺しきれない。
本当に夜の路上は始末が悪いのだ・・・。
踏まれ蹴られて、気がつくとセンターラインの上まで来てしまっていた。
誰か通らないかな・・車が来ないかな・・弱気の虫が顔を覗かせる。
時折、隙を見て顔面にも靴先が襲って来るのだが、それだけはどうにか防いだ。
人間、咄嗟の時に庇うのは顔面なんだと、後からつくづくそう思った。
お互いの荒い息遣いが静かな闇の中に響く。
やっと太ったチンピラ風の男の攻撃は一段落し、何やら勇ましく口上を述べている。
何故俺はこれ程までに痛めつけられねばならないのか・・?
ただ自分の車を抜いて行っただけの俺に、これだけ執拗な攻撃をする必要が何処にあるのか・・?
こういう人間が世間にのさばっていていいのか・・?
あまりに理不尽すぎる・・・。
許せない・・許せない・・絶対に・・許さない!
いつもの「血」に火がついたのは自分でも分かった。
ギュウッと拳を固める。体がカ~ッと熱くなり、全身に力が漲る。
何やらグダグダ言いながら、ボコッと蹴りを入れて来るチンピラ風の男を観察する。
慌てふためいていた先刻とは明らかに違う自分が居る。体は熱いのにやけに頭は冷めている。
視線の先にダボダボしたズボンを履いた男の足がある。
クッソ~ッ!このデブいい気になりやがって!
ザザッ!寝転がった状態から右足を思い切り振り抜く。自然に体が動いた。
こんな技は練習でも一回もやった事はない。「血」に着火した時は頭よりも先に体が動くのだ。
体は独楽の様に回転し、アリキックの様な蹴りが放たれる。
蹴りは男の膝裏に命中し、ガクンと膝が折れる。
虚を衝かれた男はそのままバランスを崩し尻餅をついた。
絶対に許さない!感情のまま飛びかかり、両の拳を顔面めがけて振り下ろす!
飛びかかった際、自然と馬乗りみたいになったのは良いが、これが意外に安定しない。
相手の腹がブヨブヨだったせいか、興奮しすぎていたせいか、上手くパンチが当たらない。
それでも滅茶苦茶に拳を落としていく。ただ顔面を殴る事しか考えられない。
長年かけて練習して来た技など何も出ない。ただただ顔面に拳を突き立てる。
ストレートもフックもない。拳に怒りと憎しみを込めて振り落とすのみ。
男は仰向けから起きようと何度か上半身を起こすも、狂った様に放たれる拳でその度に沈んでいく。
ゴンッ!ゴンッ!アスファルトに後頭部を激しく打ち付けているのは、拳の感覚で分かる。
男は起き上がるのをやめたのか、そのまま仰向けに寝転がる。
「がああああ~っ!」声にならない雄叫びをあげながら殴り続ける!
ガツン!ガツン!ガツン!顔面を捉えた拳に、肘に、肩に、重く固い衝撃が伝わる。
何発殴ったか分からないが、男はだらんと脱力していた。
恐らく起き上がるのをやめたと思った時点で、とっくに失神していたのだろう。
身に着けている金のネックレスとブレスレットが自販機の明かりに照らされて怪しく光る。
パンチパーマの男の鼻と口の辺りはグチャグチャで真っ赤だ。
フウフウと荒い息づかいの中、ハッ!と気付く。車の中にもう一人居たはずだ!
慌てて身を翻し、セルシオに向かって走る。
思い切り運転席のドアに前蹴りを数発ぶち込み、「らあ~っ!」意味不明な雄叫びを上げながらドアを開ける。いかにもという悪趣味な車内から、タバコと香水の臭いが一気に外へ流れ出る。
助手席では、いかにもチンピラの女という容姿の女が泣きながらガタガタと震えている。
過去、このパターンでチンピラ彼氏が善良な?人間達を葬る様を、面白おかしく見て来たのだろう。
そうでなければ途中で止めに入るなり何なりするはずだ。このクソアマが!
獣の様にガッ!と踏み込み、威嚇する。
確かにあの勢い、あのパターンでは、常人では滅多打ちにされて終わってしまうだろう。
皆に「何の為に?」と笑われながらも、愚直に鍛え続けたこの体が役に立ったのだ。
思い切りセルシオのドアを閉め、更にもう一発前蹴りを食らわす。
センターライン近くでは男が未だ微動だにせず、だらしなく四肢を放り出している。
それを見るや興奮は最高潮に達し「うおおおお~っ!」両拳を握り締めながら思い切り叫ぶ。
敵を倒した喜びなのか何なのか自分でも分からない。ただ本能の赴くままに叫ぶ。
すると真っ暗だった近くの民家の電気が次々に点き出した。ヤバイ!
慌てて車に乗りこんでアクセルを踏む。勿論、ナンバー灯が光る為、ライトは点けない。
この辺りは過去のトラブルの経験が活きている。
真っ暗の中、自宅に向かって疾走する。
しかし途中で、つけられてたらマズイ・・と進路変更し、そのままアテもなく走り続ける。
暫くするとハンドルを握る手に違和感を感じ始めた。上手く握れないのだ。
拳を見ると両方ともパンパンに膨れ上がっている。こりゃやっちゃったか・・。
徐々に冷静さを取り戻すと、途端に弱気になってきた。
ナンバー見られなかったかな・・死んでないかな・・様々な不安や憶測が頭をよぎる。
ああ・・待ち伏せとかされたらどうしよう・・車変えようかな・・俺は元々気の小さい男なのである。
しかし・・心配しながらも、それ以上にチンピラ男を撃破出来た事に満足していた。
あれだけの攻撃を食らっても耐えられた事、体重差があってもKO出来た事・・。
今まで笑われながらも続けて来た事が無駄ではなかったという満足感、安心感、充実感・・。
こういう瞬間は人生という長いスパンで考えても、そう多くは訪れないであろう。
どれ位走っただろうか?車は通り慣れた道をなぞる様に家へと向かっていた。
車を自宅の車庫に入れ、玄関のドアをくぐる。既に両親は寝ている様だ。
明朝、顔を合わせたら、階段で転んだと嘘をつこう・・無駄な心配をかけたくなかった。
風呂場に行き、服を脱ぐ。ズキズキとアチコチに痛みが走る。
異様な形に膨れ上がった両拳、擦過傷だらけの腕や足、変色し始めた胸と腹を見つめる。
それぞれの患部をチェックしてみる。素人判断だが、拳以外は骨折までは至ってない様だ。
顔を上げ、鏡を見る。
顔も頭もあれだけの攻撃を受けた割には傷が浅い。
ふうう・・・深く大きく安堵の溜息をつき、もう一度鏡を見る。
鏡の中には、口元に微かな笑みを浮かべた自分が居た。
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