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「それじゃ帰ります。マスター、どうもね~。」「お疲れさ~ん!気をつけて帰んなよ~!」
陽気な会長の声を背に受けながらジムの引き戸を滑らせる。
看板も無く、まるで場末のスナックのような寂れたジム。
バーベルのプレートは床に無造作に転がり、多種多様な雑誌が其処彼処に散らかっている。
掃除もろくにしておらず、清潔感のかけらも無い汗臭い空間。
それでもウェイトトレーニングを行う為の道具は揃っている。
マシン類は会長手作りの微妙な物ばかりだが、フリーウェイトを行う器材は他のジムよりも充実している。
その一角にサンドバッグが吊り下げられている。これが当初このジムを選んだ一番の理由でもあった。
所謂トレーニングジムに、こういった物が設置されている所はまず無い。
仲間達と格闘ごっこをして遊んでいた俺には魅力的な空間だった。
普通サンドバッグを叩くには、ボクシングなり空手なりに入門しなければ叩けないだろう。
それが誰でも気軽に叩けるとあって、すぐに格闘仲間の中西さんと入会したのだった。
綺麗で小洒落たジムは幾つもあるのだが、俺のような粗雑な人間には分不相応といったところか。
いつも陽気な会長と仲間達の馬鹿話が終始飛び交うこのジムが、俺には何とも居心地が良かった。
この日もいつものようにサンドバッグを叩きまくり、軽くウェイトをこなした。
普段と変わらず体重は57kg、体脂肪は一桁をキープしている。
引き戸を閉めて車に乗り込む。ズシンとした疲労感が全身を貫く。
仕事帰りに寄ったので、時間は思ったよりも遅くなってしまい、既に0時近くなっていた。
ジムから自宅までは車でおよそ30分、この時間帯ならもう少し早く着くだろう。
深夜になっていたのとジムで追い込みすぎたせいもあって、睡魔がちょっかいを出してくる。
こんな時はお気に入りのロックをガンガンかけて、一気に家まで帰ろう。
道は予想通り空いていた。しかし・・・・。
家路の半分を越えた辺りで挙動不審な車が前を走っている。
何だよ・・おかしな運転しやがって・・イライラしつつも暫く後に続く。
フルスモークのセルシオがノロノロと15キロ程度で走り、時折ブレーキを踏む。
この手の類は注意しなければいけないのだが、疲れと眠気で危機感が鈍っていたのかもしれない。
対向車も殆ど来ないし、さっさと抜いて家に帰ろう。そう思ってしまった。
ギアを2速に入れて一気に抜き去る。
ネオンと車のライトに照らされて、濃いスモーク越しに助手席にも頭の影がうっすら見える。
過去の経験上、一応バックミラーを確認したが追って来る気配は無い。
交差点を右折、K学園の正門近くの赤信号に引っ掛かった。
青になりゆっくりと左折した瞬間、後ろから一台の車が急接近して来た。
その車は一気に俺の車を抜き去り、斜めに割り込んで進路を塞いで急停車!危ねぇ!
あっ!さっきのセルシオだ!
カチャッと運転席のドアが開き、太ったチンピラ風の男が蟹股でこちらに向かって歩いて来る。
ヤバイ!MASAとの経験上、こういう小競り合いの際の準備は分かっている。
眼鏡を外し、財布をダッシュボードに置いた時だった。
運転席のドアがガチャッと開いたと思った瞬間、凄い勢いで上着を引っ張られた。
座ったままだったので成す術も無く、そのまま地面に転がされる。
過去経験した事のない力強さ・・顔が地面に叩きつけられた。
アスファルトの冷たさと固さが顔に伝わる。そのまま1メートル程、ズズッと引き摺られた。
慌てながらも何とか体勢を立て直そうとしたのだが、力と勢いに押されてどうにもならない。
男は何やら喚いているのだが、それが大声ではないのが不気味だ。
相手の体重は軽く見積もっても80kgはあるだろう。体格差ってものを否が応でも実感する。
バッ!男の足が上がる。ヤバイ!ヤバイ!咄嗟に顔を両手で守る。
ガツッ!ガードの上から思い切り踏みつけらる。衝撃で後頭部をアスファルトに打ち付けた。
ドスッ!ドスッ!続けざまに腹にも重い蹴りが突き刺さる。
仰向けのまま両腕で顔を守り、両膝で腹を守ろうとするも、思ったよりも打撃を食らってしまう。
普段頭の中でアレコレ考えてるようには、事は上手く運んでくれない。
空いてる所を狙っているのか、踏みつけや蹴りが色んな角度から容赦なく襲って来る。
靴ってのはこんなに固いのか・・アスファルトはこんなに固いのか・・。
ガツン!ガツン!太ったチンピラ風の男は何かを喚きながら攻撃の手を止めない。
何も出来ない。ただただ丸くなり、顔面だけを守るのが精一杯だ。
鉄の味がする。口の中を切ったようだ。鼻の奥からは打撃を食らった時の独特の臭いがする。
踏まれる度に後頭部をアスファルトに打ち付けているのでクラクラしてきた。
力なく横向きになるも、今度は腹にサッカーボールキックの連打が襲い掛かる。
ガードする前腕も痺れてきてしまった・・こりゃ・・ダメだ・・。
空手やキックをかじり、仲間と格闘技の真似事をしていたので、こういう事には少しは自信があるつもりだった。事実、これまでの路上の喧嘩では、殆どダメージを受けずに事を終わらせていた。
しかし・・今度の奴は始末が悪い。とにかく慣れている。喧嘩慣れしている。
車を止めてからの一連の流れはどう見ても熟練者、しょっちゅうこんな事をしてるのだろう。
所詮・・・こんなもんか・・・。
こすれた額をアスファルトに付け、血の臭いを嗅ぎながら、ひたすら惨めに亀になり続けた・・。
仲間達と格闘ごっこをして遊んでいた俺には魅力的な空間だった。
普通サンドバッグを叩くには、ボクシングなり空手なりに入門しなければ叩けないだろう。
それが誰でも気軽に叩けるとあって、すぐに格闘仲間の中西さんと入会したのだった。
綺麗で小洒落たジムは幾つもあるのだが、俺のような粗雑な人間には分不相応といったところか。
いつも陽気な会長と仲間達の馬鹿話が終始飛び交うこのジムが、俺には何とも居心地が良かった。
この日もいつものようにサンドバッグを叩きまくり、軽くウェイトをこなした。
普段と変わらず体重は57kg、体脂肪は一桁をキープしている。
引き戸を閉めて車に乗り込む。ズシンとした疲労感が全身を貫く。
仕事帰りに寄ったので、時間は思ったよりも遅くなってしまい、既に0時近くなっていた。
ジムから自宅までは車でおよそ30分、この時間帯ならもう少し早く着くだろう。
深夜になっていたのとジムで追い込みすぎたせいもあって、睡魔がちょっかいを出してくる。
こんな時はお気に入りのロックをガンガンかけて、一気に家まで帰ろう。
道は予想通り空いていた。しかし・・・・。
家路の半分を越えた辺りで挙動不審な車が前を走っている。
何だよ・・おかしな運転しやがって・・イライラしつつも暫く後に続く。
フルスモークのセルシオがノロノロと15キロ程度で走り、時折ブレーキを踏む。
この手の類は注意しなければいけないのだが、疲れと眠気で危機感が鈍っていたのかもしれない。
対向車も殆ど来ないし、さっさと抜いて家に帰ろう。そう思ってしまった。
ギアを2速に入れて一気に抜き去る。
ネオンと車のライトに照らされて、濃いスモーク越しに助手席にも頭の影がうっすら見える。
過去の経験上、一応バックミラーを確認したが追って来る気配は無い。
交差点を右折、K学園の正門近くの赤信号に引っ掛かった。
青になりゆっくりと左折した瞬間、後ろから一台の車が急接近して来た。
その車は一気に俺の車を抜き去り、斜めに割り込んで進路を塞いで急停車!危ねぇ!
あっ!さっきのセルシオだ!
カチャッと運転席のドアが開き、太ったチンピラ風の男が蟹股でこちらに向かって歩いて来る。
ヤバイ!MASAとの経験上、こういう小競り合いの際の準備は分かっている。
眼鏡を外し、財布をダッシュボードに置いた時だった。
運転席のドアがガチャッと開いたと思った瞬間、凄い勢いで上着を引っ張られた。
座ったままだったので成す術も無く、そのまま地面に転がされる。
過去経験した事のない力強さ・・顔が地面に叩きつけられた。
アスファルトの冷たさと固さが顔に伝わる。そのまま1メートル程、ズズッと引き摺られた。
慌てながらも何とか体勢を立て直そうとしたのだが、力と勢いに押されてどうにもならない。
男は何やら喚いているのだが、それが大声ではないのが不気味だ。
相手の体重は軽く見積もっても80kgはあるだろう。体格差ってものを否が応でも実感する。
バッ!男の足が上がる。ヤバイ!ヤバイ!咄嗟に顔を両手で守る。
ガツッ!ガードの上から思い切り踏みつけらる。衝撃で後頭部をアスファルトに打ち付けた。
ドスッ!ドスッ!続けざまに腹にも重い蹴りが突き刺さる。
仰向けのまま両腕で顔を守り、両膝で腹を守ろうとするも、思ったよりも打撃を食らってしまう。
普段頭の中でアレコレ考えてるようには、事は上手く運んでくれない。
空いてる所を狙っているのか、踏みつけや蹴りが色んな角度から容赦なく襲って来る。
靴ってのはこんなに固いのか・・アスファルトはこんなに固いのか・・。
ガツン!ガツン!太ったチンピラ風の男は何かを喚きながら攻撃の手を止めない。
何も出来ない。ただただ丸くなり、顔面だけを守るのが精一杯だ。
鉄の味がする。口の中を切ったようだ。鼻の奥からは打撃を食らった時の独特の臭いがする。
踏まれる度に後頭部をアスファルトに打ち付けているのでクラクラしてきた。
力なく横向きになるも、今度は腹にサッカーボールキックの連打が襲い掛かる。
ガードする前腕も痺れてきてしまった・・こりゃ・・ダメだ・・。
空手やキックをかじり、仲間と格闘技の真似事をしていたので、こういう事には少しは自信があるつもりだった。事実、これまでの路上の喧嘩では、殆どダメージを受けずに事を終わらせていた。
しかし・・今度の奴は始末が悪い。とにかく慣れている。喧嘩慣れしている。
車を止めてからの一連の流れはどう見ても熟練者、しょっちゅうこんな事をしてるのだろう。
所詮・・・こんなもんか・・・。
こすれた額をアスファルトに付け、血の臭いを嗅ぎながら、ひたすら惨めに亀になり続けた・・。
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