KAROUDEN 「覚醒 ～嵐の専門学校～」

「シャラーップ！！」１８０ｃｍ、９０ｋｇは軽くあるであろう外人教師Ｈの怒号が教室に響いた。
ノシノシとコチラに向かって歩いて来る。俺は既に我慢の限界だった・・。

高校卒業後、女のケツを追っかけて親に入らせてもらった英語の専門学校。
故に学ぼうというモチベーションは皆無だった。

１つ年上の悪友、Ｎ氏や塚ちゃんと、しょっちゅう授業を抜け出しては、近くにあるドライブインでゲームをしたり、海で昼寝したりしていた。それでも一応単位なんて煩わしいモノが存在したので、それをクリア出来る様に計算してサボっていた。

ノホホンと過ごす毎日。しかし、あるテストの日、事件は起こった。

外人教師のＨが生徒１人１人に答案用紙を配って歩く。しかし俺と塚ちゃん（Ｎ氏は別クラス）のとこには来ないで教壇に戻ってしまった。

「あれ？先生！俺達、まだ配られてません。」授業中は日本語が禁止だった為、拙い英語を喋ってみる。
すると不機嫌そうな顔をして「オマエラはテストを受ける資格が無い！」と言い出した。多分だが・・。

Ｈの言うにはテストを受けるには前回のテストから、最低２回は授業を受けなければダメだと言う。
俺達は３回出てるはずだ。サボるにも計算していたから間違いない。

「３回出てるはずですけど・・」「い～や！出てない！」そんなやりとりがヘタレ英語で２～３回続いただろうか。
するとクラスで一番の優等生、英語ペラペラのＹさんが流暢な英語でフォローしてくれた。

「彼らはちゃんと３回出ています。私も知っています。」「シャラーップ！！」

Ｙさんが言い終わるのを待たずにＨがいきなり大声を上げた！突然の事態に静まり返る教室内。
優等生のＹさんは完全に動揺している。折角助けてくれたのにカワイソウだ。

Hが顔面を真っ赤に紅潮させてノシノシとこっちに歩いて来る。
Ｙさんの様子を見た俺はかなり頭にきていた。

Ｈは俺の机の前で立ち止まり「＊＋＃＄％＆！」何やら大声でまくし立てる。
以前から気に入らないと生徒に向かって汚いスラングを連発するとの噂だった。
恐らくその類だろう。そして次の瞬間、答案用紙をバッと俺と塚ちゃんに投げつけた。

ヒラヒラと床に落ちる答案用紙。馬鹿らしくなってしまい「塚ちゃん、出ようぜ！やってられっか！」
机をガタンと蹴っ飛ばし、スタスタと歩いて行く。教壇の前を通らないと教室を出られない椅子の配置。
真ん中を歩いて行くとＨがヌオッと立ちふさがった。そして「＊％＄＃～！」まただ。もう我慢の限界だ。

「何言ってんだかわかんね～よ！日本語で言え、このクソ野郎！」「＃＄＃＄％＆％＄！」
Ｈは額がつきそうな距離まで顔を持って来てわめき散らす。「だからわかんね～って言ってんだろ！」

気が付くと左手でＨの胸倉をつかんでいた。Ｈは更に激しさを増し、ジェスチャーを交えて怒鳴り散らす。
「この手は何だ？これを離さないとオマエどうなるかわかってんだろな！？」そんな感じだ。

１８０ｃｍ越えのＨの胸倉を１６３ｃｍの俺がつかんでいる。傍から見ればおかしな光景だっただろう。
急に冷めてしまい、サッサと行こうと左手を離したその瞬間！バシーン！左頬にＨのビンタが飛んで来た。
同時にガツーン！右の拳に衝撃が走る！ガキの頃以来、ろくに喧嘩もしてなかった俺が反射的にぶん殴っていた！

筋トレしかしておらず、殴り方も分からない俺の一発でＨの腰が落ちた。
そこからは正直覚えていない。気が付くと塚ちゃんとアッキー、腰に２人の人間を引きずっていた。
教壇の前だったはずが部屋の壁まで移動していて、眼鏡が砕けたＨはしゃがんで亀になっていた。

後日、皆から聞いた話では、一発入ってからＨが崩れた後、そのまま殴り続けていたらしい。

「やってられね～よ！こんな学校やめてやらあ！」そう言い放つと教室のドアを思い切り蹴り空けて、そのまま職員室へ。「あの～俺やめます。」「何？どうしたの？何があったの？ちょっと待ちなさい！」

普段世話になってる先生の顔を見て正気に戻った俺はポツリと言い放つとバス停へ消えた。

女のケツを追っかけて入らせてもらった学校、やっちまった。
駅へ向かうバスの中、またしても「親になんて言おう・・」そればかり考えていた。