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「そろそろ出なきゃね・・寂しいな・・マコちゃん、なかなか会ってくれないんだもん」
「ゴメンね~。来週時間作るから・・ね?」

ぐずるM穂を何とかなだめてシャワーに向かう。
チェックアウトが迫っているというのに、2人は浴室で、この日何度目かの情交に及んだ。

チェックアウトを済ませ、ホテル街のネオンの中を車で南に下る。
このネオンの中にどれだけの人間の情念が蠢いているのか?
自分もついさっきまでその1人だった俺は、そんな事を考えながら車を走らせた。

遠くに暴走族らしきバイクの音が聞こえる。出来れば遭遇したくないな・・。

左折してバイパスに入る。
あちゃ~、ここだったか・・2車線を塞ぎ、暴走族のバイクがノロノロと走っている。
けたたましい音をたてて、蛇行運転を繰り返している。

MASAとつるんで以来、こういう輩とのトラブルは頻繁で多少免疫は出来ていた。
幾度かの喧嘩も経験していたし、格闘技もかじっていたので1対1なら自信はあった。
しかし敵の単車は8~9台、その殆どに2ケツしている。ざっと見積もって15人か・・。
今回は女連れ、面倒はゴメンだな・・。

族の最後尾についてノロノロと走る。しかし今晩の奴らはタチが悪い。
隣まで来て木刀を振り回し、タコ踊りしている。

「マコちゃん、怖いよぉ・・・」M穂は既に半べそだ。女が泣いてる姿が俺に着火した。
ギアを2速にぶっこんで暴走族の隙間に突入。そのままぶち抜いて加速する。

「きゃ~っ!やめようよ!怖いよ!」M穂は泣き叫んでいる。
ノタノタとコールをきりながら走っていた族どもが一斉に追って来た。

しまった・・・右折して逃げようと思ったが、運悪く赤信号。
信号無視して突っ込もうと思ったが、これまた運悪く対向車線はトラックで渋滞。完全に塞がっていた。
くっ・・追いつかれる・・万事休すか。落ち着け・・落ち着け・・。

けたたましい音と共に先頭のバイクが右折帯で止まっている俺の車の運転席側にビタッと停まる。
続いて前を塞がれ、助手席側も後ろも全て塞がれてしまった。
メンチをきる者、半笑いの者、全員が俺の車を覗き込む。
車はスターレット、族どもが警戒する訳がなかった。

「M穂、顔伏せてろ・・」そう言って運転席の窓を全開にする。
MASAとの経験上、こういう時は先手だ。出鼻をくじくしかない!
「おい!テメーら何処の小僧だぁ!?喧嘩売ってんのか!あ?」思い切りデカイ声で言い放つ。
内心ビビリまくりだが、慣れないハッタリに全身全霊の力をこめる。

これだけの人数を前に、鬼気迫る顔で大声を出す男に奴らの勢いが止まる。
空吹かしもせずに全員食い入るように俺を見る。

「×××です。」「今日は誰が仕切ってんだ?テメーか?」「はい。」
「OBに随分な真似してくれんじゃねえか!」「いきなり抜かれたんで・・こっちも頭くるじゃないっすか。」
周りの奴らは俺と鉢巻野郎のやりとりを聞いている。

「女の車だからってなめてると痛い目見んぞ。今の頭は誰だ?」「××です。」
「俺は××の時のもんだよ!知ってんだろ?」「はい。」昔、小耳に挟んだ名前を出してみた。

「とりあえずコイツら行かせろよ。」「はい。」鉢巻が合図するとブア~ン!一斉に走り去って行く。

「モノホンのヤクザだって軽乗ってる事もあんだぞ。」「いや、自分らも抜かれたから頭きちゃったんで・・」
「もう良いから行けよ!」「はい。」鉢巻もブアン!と吹かすとバイパスを東にかっ飛んで行った。

ふぁ~っ!助かったぁ・・。安堵感が全身に広がる。
ワベちゃんちで「カメレオン」「今日から俺は!!」「ろくでなしBLUES」等を熟読していたのも役に立った。
ハッタリなんてどう言ったら良いか分からないもんな。全く世の中、何が幸いするか分からない。

隣を見るとM穂はまだ顔を伏せて震えている。無理も無い。俺も震えてたもんな。
右折して自宅近くまで来て、民家の少ない所に車を停める。

「もう大丈夫だよ。」「嫌っ!」何故かM穂は怒っている。
「あのままユックリ行けば良かったのに!」「そうだね、ゴメンね。」
「でもマコちゃんってそういう人だと思ってなかった。」M穂がマジマジと俺の顔を見る。
どうやらさっきのハッタリが本物だと思っているらしい。

「だって名前聞いてビックリしてたじゃん。」「ああ、ちょっと知ってるだけだよ。」
昔聞いた名前がこんな所で役に立つとはね・・実はよく遊んだ同級生の弟なのだが、この辺のデカイ族の頭になっていたのだ。何はともあれ良かった。

「凄い怖かったんだよ!殺されるかと思った。」今度はおいおいと泣き崩れてしまった。
「怖い思いさせてゴメンね。」「うん・・でもちょっとカッコ良かった。」「そっか?」

涙でグシャグシャになっているM穂を抱きしめる。
ギュ~ッとM穂も俺にしがみつく様に抱き付いて来る。
「こんなとこでダメだよぉ・・」「もう遅いから平気だよ。」車のすぐ近く、5mほど先には民家が数軒ある。

右手は既にM穂の股をまさぐっていた。「もう・・」そう言うM穂だが下着が湿るまでに濡れていた。
「あ・・」「声出しちゃダメだよ・・」「うっ・・」

危機を脱し、安堵感に包まれた2人の情交は、ホテルの時のそれよりも激しかった。

M穂を送り助手席に目をやると、2人の粘液で濡れたシートが乾いて光っていた。
明日掃除しなきゃな・・。N子と会うのにバレたらヤバイ。

しかしマジで危なかったな・・家に帰るとガクッと疲れが出た。無事に切り抜けられて良かった・・。
あと今日は何発やったんだ?ホテルであれだけ・・車で・・もう寝るか。
明日は性欲が強いN子とデートだもんな・・。

精神と肉体が極限にまで疲労しているにも関わらず、明日会う女の事を考えながら目を閉じた。
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